ポリヴェーガル理論 で心と体を整える ―自分の神経と“対話”するセルフケア
公開日:2025年 10月 29日
なんとなく疲れやすい、気持ちが不安定になりやすい、そんなとき。私たちはつい「心」だけに原因を探しがちですが、実はその不調は“神経のモード”に関係しているかもしれません。近年注目されている「 ポリヴェーガル理論 」は、自律神経の働きをやさしくひも解き、自分自身を安心の状態へと導くヒントを与えてくれます。スピリチュアルに興味がある方や、薬に頼らず自分の体と対話するセルフケアを大切にしたい方にとっても、日常に取り入れやすい考え方です。

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ポリヴェーガル理論 とは?
ポリヴェーガル理論 は、アメリカの神経生理学者スティーブン・ポージェス博士によって提唱されました。「自律神経はオンとオフの2種類」という従来の考え方に対し、この理論では神経の反応をさらに3つの状態に分けて捉えます。それによって、自分の体や心の反応をより繊細に理解できるようになります。
3つの神経モード
- 1. 社会的交流モード(安全・安心)
落ち着いて人とつながりやすい状態。呼吸がゆったりし、表情も柔らかくなります。 - 2. 交感神経モード(闘争・逃走)
体が危険に備えるモード。心拍数が上がり、そわそわしたり、ピリピリした感覚が強くなります。 - 3. 背側迷走神経モード(シャットダウン)
体や心がエネルギーを切ってしまうモード。無気力、思考の停止、感情が感じにくくなるなどの反応が現れます。
この3つのモードは状況によって自然に切り替わるもので、どれも生きるために必要な反応です。大切なのは、自分が今どのモードにいるのかを“気づけること”。それがセルフケアの第一歩になります。
今のあなたはどのモード?セルフチェック
まずは、簡単なチェックで今の自分の神経状態を見てみましょう。下の質問に直感で答えてみてください。当てはまる数が多いモードが、今のあなたの神経状態をあらわしている可能性があります。
社会的交流モード(安全・安心)
- □ 呼吸が深く、自然にゆったりしている
- □ 表情や声のトーンが柔らかいと感じる
- □ 人とのつながりを心地よく感じられる
- □ 落ち着いて物事を考えられる
交感神経モード(闘争・逃走)
- □ 呼吸が浅い・早いと感じる
- □ 体に力が入りっぱなしになっている
- □ そわそわ、イライラなどの高ぶりを感じる
- □ 人とのやりとりがなんとなく億劫になる
- □ 眠っても疲れが取れにくい
背側迷走神経モード(シャットダウン)
- □ 無気力で、体が重く感じる
- □ 頭がぼんやりして、考えがまとまりにくい
- □ 感情が感じにくく、何事にも興味がわきにくい
- □ 誰かと話すことさえ少し遠く感じる
- □ 最近、笑顔が減っている気がする
チェックが多いモードが、今のあなたの心と体の状態を映し出しているサインです。どのモードであっても「良い・悪い」はありません。自分の状態をやさしく観察し、安心モードに戻すきっかけを見つけていきましょう。
モードを切り替える、やさしいセルフケア

1. 呼吸を意識してみる
ゆっくりとした深い呼吸は、神経に「安全だよ」というサインを送ります。4秒吸って、6秒かけて吐く「4-6呼吸法」は手軽でおすすめです。朝の始まりや寝る前など、日常のちょっとした時間に取り入れてみましょう。
2. 自分の身体感覚に戻る
手を胸やお腹に当てて、温かさや呼吸の動きを感じてみてください。グラウンディング(足裏の感覚に意識を向ける)も有効です。思考よりも「今、ここ」に意識を戻すことで、神経が安心モードに切り替わりやすくなります。
3. 信頼できる人と話す・目を合わせる
人との穏やかなつながりは、社会的交流モードを活性化させる最も自然な方法のひとつです。誰かと穏やかに話したり、安心できる人と目を合わせるだけでも、心がふっとゆるむのを感じるはずです。
神経と対話する時間を、日常の一部に
ポリヴェーガル理論 は、特別な知識がなくても日常に活かすことができます。
大切なのは、心と体の声に耳を傾ける「ちょっとした習慣」。呼吸を深める、身体感覚を感じる、人と穏やかにつながる――そんな小さなセルフケアを積み重ねることで、少しずつ安心の状態が増えていきます。もし不調が長く続いている場合は、専門家の力を借りることも大切です。セルフケアとプロのサポートを上手に組み合わせて、自分のペースで心と体を整えていきましょう。



















